『ハリーポッター』は児童文学にあたるが、大人にも人気のある本である。今では世界中のベストセラーとなった本だ。登場人物の心理描写もよく描かれている。
ストーリは、ロンドンのプリベット通りにすむダーズリー叔父さんと叔母さんと従兄弟に邪魔者扱いされながら暮らしていたハリーのもとへ、1通の手紙が届く。それは魔法学校ホグワーツからの入学許可書だった。そして、彼が11歳になると突然自分が魔法使いであること、両親は悪の魔法使いヴォルデモートによって殺され、ハリーは唯一生き残った少年であることを知らされる。魔法学校へ入学後、そこで知り合った親友のロンとハーマイオニーに助けられながら、ホグワーツ校に隠された賢者の石に関わる謎を解き、ヴォルデモートと対決をするという話だ。
トールキンの『指輪物語』より、物語はずっとシンプルである。
世界観は主に私たちが住むマグルの世界と魔法の世界である。このふたつの世界は、まったく隔たりがあるのではなく、どこか繋がっている点も重要だ。ちょっと知識があれば、誰でも魔法の世界へいける設定となっている。
しかし、何回も読み返してみると、『ハリーポッター』は単なる不思議なことが起こる魔法の世界の話ではないことに気がつく。
魔法でカモフラージュされながらも、物語の冒頭から練りこまれていたものがある。それは「死」だ。ハリーは冒頭から「死」の恐怖から戦い続けている。15章でケンタウロスたちが、ハリーに死の予言があることを知っていたことからも伺える。
児童文学のジャンルでありながらも、「死」を取り込むことは画期的だと思う。今まで児童文学のファンタジーと聞きくと、現実ではありえない、不思議でかわいらしい雰囲気だったと思われる。しかし、『ハリーポッター』はそうでありながらも、子供の心理と成長を描写しているだけでなく、「死」を取り入れることによって、影ながらも奥深いものとなっている。これも人気である秘密だと思う。「死」を表現しているからこそ、そこから見出せる「生」への実感が出てくるのだ。だからこそ、読者にプラスの生き方を作者は望んでいたのではないかと思う。子供だけでなく、大人もこの話に引かれてしまうのは、以上のことも作品中に含まれているからだと思う。
参考文献
『ハリーポッターと賢者の石』
『Harry Potter and the Philosopher's Stone』
J.K. ローリング 著
松岡佑子 訳
静山社
2004/07/31 黄伊魔